インターネットの歴史
今や世の中に欠かすことのできなくなったインターネット。一体どこでいつから誰によって始まったのでしょうか?
結論から言うと、米国で1969年にARPANET(アーパネット)と呼ばれる世界で最初のパケット交換ネットワークがインターネットの起源と言われています。今から約50年前の話ですね。日本で本格的にインターネットが普及したのはWindows95が発売された今からちょうど20年前ですから、意外に古いと思われる方もおられるかもしれません。
従来の回線交換ネットワーク(電話網)は、電話番号に基づいて、交換機で回線を切り替えて行き、端末間の回線を直接繋ぎます。しかし、一つの回線が端末間に常に占有され、回線の利用効率が低いという欠点がありました。
そこで登場したのがパケット交換です。 パケット交換では、通信データがある一区切りのデータ(パケット)ごとに分けられます。このパケットには宛先アドレスなどの制御情報が付加されます。パケット交換ネットワークは、宛先アドレスに基づいて、ルータなどで送信先を制御し、送信先に届ける仕組みです。この際、パケット交換は通信データを送受信している間しか回線を使用しないので、回線を占有しません。つまり、同一回線において異なる複数の通信データを送信できるので、回線の利用効率は高くなります。 回線交換ネットワークとパケット交換ネットワークを比較したのが下図です。
このパケット交換の元ともなるコンピューターのタイムシェアリングの考えを含む論文が1960年にJ・C・R・リックライダーにより「人間とコンピューターの共生」というタイトルで提唱されています。
J. C. R. Licklider. Man-Computer Symbiosis, IRE Transactions on Human Factors in Electronics, volume HFE-1, pages 4-11, March 1960
J・C・R・リックライダーは1962年10月にARPA(Advanced Research Projects Agency:アメリカ国防高等研究計画局)のIPTO(Information Processing Techniques Office)とういう部署の部長に任命されます。ARPAのIPTOは、J・C・R・リックライダーからサザランド、ロバート・テイラーそしてローレン・ロバーツと引き継がれ、1969年10月29日のARPANETによる世界初のコンピューター同士の接続の成功となります。
当時、ARPANETの最初のネットワークは上の図の4ヶ所でした。
1. カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA)
2. スタンフォード研究所(SRI)
3. カリフォルニア大学サンタバーバラ校 (UCSB)
4. ユタ大学の計算機科学科(UTAH)
1969年10月29日午後10時30分、UCLAの学生プログラマからスタンォード研究所に「login:」とうテキストが送られました。しかし、実際には「lo」まで受信したところでシステムがクラッシュしてしまいました。システムは約1時間後に復旧し、当初のメッセージ全文の送受信を成功させました。
その後、UCLAとスタンフォード研究所間の2カ所で恒久的にリンクを確立したARPANETは1969年11月21日に公開実験を開始しました。この出来事を記念して今日では11月21日がインターネット記念日とされています。
1969年12月5日には、上記4カ所のネットワークが完成し、1970年にはアメリカ東海岸ともつながりました。1973年には、ARPANETは無線通信により海を超えてノルウェーやロンドンともつながりました。日本では、1981年に初めて東北大学がARPANETの接続に参加しました。
その後、現在でもインターネット通信方式の約束事であるTCP/IPプロトコルが1982年に完成し、翌1983年にARPANETに導入されました。インターネットという言葉もプロトコル策定の中で1974年の12月にinternetworkingの省略形として使われるようになっていきました。そして、1982年のTCP/IP完成のときに「TCP/IPプロトコルでつながったinternet」をInternetと定義することに至りました。